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再生不良性貧血
病態と症状
再生不良性貧血とは、骨の中の骨髄にある血液を造るもとになる細胞「造血幹細胞」が減少することにより、白血球、赤血球、血小板のすべてが減少する病気です。医学的にはこのような状態を汎血球減少(はんけっきゅうげんしょう)といいます。白血球は細菌などから身体を守る細胞、赤血球は肺から取り込んだ酸素を臓器に運搬する細胞、血小板は出血を止める細胞です。汎血球減少が進むと、白血球が減ることによって発熱や咳などの感染症の症状、赤血球が減ることによる動悸、息切れ、疲れやすさ、頭重感、顔色不良などの貧血症状、血小板減少によるアザができやすい、鼻出血や歯肉出血などの出血症状が出てきます。わが国では、再生不良性貧血に罹っている患者数は約5,000人、1年間に100万人あたり約5人の方が新たにこの病気にかかるとされています。厚生労働省から難病に指定されていますので、所定の手続きを経て申請が受理されますと、医療費の補助を受けることができますので、詳細は担当医におたずねください。
病因
再生不良性貧血には、生まれつきこの病気になる先天性のものと、生まれつきではなく何らかのきっかけがあってこの病気になる後天性のものがあります。後天性のものはさらに原因がはっきりしない特発性のものと、薬剤の使用やウイルス感染など原因がわかっている続発性のものにわけられます(表1)。この病気が、どのようにして起こるのかはよくわかっていませんが、後で述べますように免疫(通常は外から入ってきたものを攻撃するリンパ球の力)を抑える薬(免疫抑制剤)がこの病気に効くことがあることから考えると、リンパ球の働きが異常になって自分の造血幹細胞を壊してしまっていることが原因の一つとして考えられます。また、一部の再生不良性貧血の患者さんは、骨髄異形成症候群、発作性夜間血色素尿症や急性白血病などの血液疾患に進展することも知られており、造血幹細胞自体の異常が病因になっている可能性もあります。
先天性 |
Fanconi貧血 |
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dyskeratoshis congenita |
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後天性 |
特発性 |
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続発性 |
薬剤性:抗腫瘍薬,クロラムフェニコール,サルファ剤,金製剤など |
表1:再生不良性貧血の原因
診断
血液検査で汎血球減少を認めた場合に、再生不良性貧血を疑い検査を進めます。汎血球減少をきたす疾患には様々なものが知られていますが、骨髄での血球の産生が低下する病態と、骨髄での血球の産生は正常であるのに、血球がどんどん消費あるいは壊されてしまう病態に分けられます。再生不良性貧血は前者に含まれ、急性白血病や骨髄異形成症候群も同様の理由で血球が減少します。これらの病態を鑑別するためには、骨髄検査が必須です。骨髄検査では造血組織が減って、脂肪組織の増加が認められますが、急性白血病のように異常な細胞(白血病細胞)は見られませんので、容易に両者を区別できます。しかし、骨髄異形成症候群とは鑑別が難しく、繰り返して骨髄検査が必要になることもあります。また、骨髄の染色体検査、脊椎MRI検査などが診断の役に立ちます。
治療
再生不良性貧血の治療は、その重症度により異なるために、診断がついた時点で重症度を判定することから始まります。わが国では一般的に厚生労働省調査研究班の重症度分類(表2)が用いられています。治療法には輸血や顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF;白血球を増やす薬)などの支持療法と、蛋白同化ステロイド療法、免疫抑制療法、造血幹細胞移植などの造血の回復を目指した治療があります。一般に、重症度に応じて治療が選択されます。軽症・中等症例では無治療で経過観察しますが、汎血球減少の進行例では免疫抑制療法(シクロスポリン)や蛋白同化ホルモンの適応となります。やや重症例以上では、40歳未満でHLA一致同胞(白血球の型が一致した兄弟)がいる場合には造血幹細胞移植が推奨されますが、その他の症例では免疫抑制療法(抗胸腺細胞グロブリンとシクロスポリン併用療法)が選択されます。免疫抑制療法の無効例では非血縁者ドナー(骨髄バンクに登録されている白血球の型の一致した人)からの造血幹細胞移植が選択されることもあります。
最重症(Stage 5): |
血小板 < 20,000 /μl |
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網状赤血球 < 20,000 /μl |
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重症(Stage 4): |
好中球 < 500 /μl |
血小板 < 20,000 /μl |
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網状赤血球 < 20.000 /μl |
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やや重症(Stage 3): |
好中球 < 1,000 /μl |
血小板 < 50,000 /μl |
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網状赤血球 < 60,000 /μl |
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中等症(Stage 2): |
血小板 < 50,000 /μl |
網状赤血球 < 60,000 /μl |
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軽症(Stage 1):上記以外のもの |
- |
表2:再生不良性貧血の重症度分類
さらに詳しく知りたい方への書籍とwebサイトへの案内
- 厚生労働省難病情報センター:
http://www.nanbyou.or.jp/sikkan/042.htm - 東京都福祉保健局:
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/iryo/nanbyo/nk_shien/iryohi/06/index.html

